Geecul

Geekに踊ってカルチャーと寝る

マニ車が回り寺が飛ぶ。三千大世界の善男善女向けSF小説『天駆せよ法勝寺』

 

 

ついに法勝寺が天駆する。その知らせを聞いた善男善女は、閻浮提ーー教化しえぬ衆生が呼ぶところの地球ーーの全土で歓声の声を上げた。

上記の書き出しで始まる本書では人類は地球以外の星にも植民しており、”佛理学”と呼ばれる学術分野が発達。祈りの力がエネルギーとして、仏の力がテクノロジーとして用いられている世界が舞台である。

 

そのような世界で寺であり宇宙船である法勝寺は地球より離れた星の寺で行われる大仏の開帳に立ち会うために旅に出る。という話である。

 

寺が飛ぶとか、仏の力を活用するとか、自分でも紹介しててなんか変だなと思うがそういう世界観だし話なのだ。

散りばめられた(というには多いが)仏教用語や概念がSFとして翻訳される目新しさとその相性の良さが面白く、つい先が読みたくなる。

短編なので比較的短い時間で読むことができ、話も深刻になりすぎないので気軽に物語の世界を楽しむことができた。

 

本書は創元SF短編賞の第9回受賞作で、著者は本書記載の受賞コメントで「キリスト教的テーマはSFでよく見るのに、なぜ仏教はあまり扱われないのか。」という疑問から出発したと述べている。

確かに、キリスト教的な背景がある作品は多いような気もするけど仏教色のある作品はあまり見ないよな。と思って調べてみたら、数は少ないもののそれっぽいものを見つけた。

 

上の二つは本書とはまた毛色が違ったSF×仏教という作品のようなので是非読んでみたい。

何はともあれまずは気軽に九重塔が宇宙へ旅立つ小説を探している方には本書はおススメできる一冊である。

 

 

参考

ja.wikipedia.org

www.tsogen.co.jp

 

 

twitter.com

yashimayugen.com