なんだこのタイトルの組み合わせは!?
この文体はフィリップKディックの『流れよわが涙、と警官は言った』を意識しているようだが、そこに「孔明」が入ってくる!?という感じだ。
この違和感に目が留まり本書を読むことにした。
※結論。読んでみて、僕としてはほかの人におススメするような本ではないかな。
本書は以下の5つの物語からなる短編集である。
- 流れよわが涙、と孔明は言った
- 折り紙食堂
- 走れメデス
- 闇
- 竜とダイヤモンド
以下それぞれの物語につい世界観を紹介する。
流れよわが涙、と孔明は言った
三国志で同じみの諸葛亮孔明が馬謖を断首しようとするのだが、どうしてもできない。どうにかして切れないかと色々試しているうちにある種の哲学的な世界に入っていく。
折り紙食堂
お腹が空いて入った食堂は折り紙にあふれた不思議な食堂。この食堂を中心に複数の物語が進む。
走れメデス
王から金の王冠の調査を依頼されたアルキメデス。だが王冠の調査は一向に進まず...。
闇
世界は闇に覆われ、闇に入った人は命を落とす。そんな世界での命綱は人が闇で死ぬ度に不思議とそこに建つ電柱が照らす明かりのみ。
竜とダイヤモンド
「みょんみー」と鳴くドラゴンとダイヤモンドの秘密をめぐる物語。
感想
全体的に世界観が不思議というか、奇妙というか僕がこれまで読んできた本にはない世界観。
読む人を選ぶという内容なのは確か。何かを得たいとか、スッキリした読後感を求めている人には向かない。おそらく登場人物に感情移入もできないだろう。
物語というより、とっぴょうしもない妄想をどんどん広げていったもの。という感じ。
ということで「流れよわが涙、と孔明は言った」なんかは僕の脳内ではサイケな感じでイメージ化された、あるいはAKIRAか。
この中での個人的なお気に入りを選ぶとしたら僕は「闇」を選ぶ。
世の中には意味があることばかりではないが、意味がないことでも意味があると信じることの功罪について暗に示しているような気がするからだ。
世界観も独特で面白い。
本書はみんなに読んでほしいというような本ではないが、いつもとはちょっと違った物語または世界観を通して頭をほぐしたいという場合に力を抜いて読むならいい一冊だと思う。