サイバーパンクというジャンルの確立に貢献したという小説、『ニューロマンサー』を読んだ。
この小説は細かいところを理解しながら読み進めるタイプの物語ではなくて、どんどん読み進めていくタイプの物語だ。
そういう意味で、よく噛むんじゃなくて飲み込む必要がある。
物語中の用語が独特かつ場面展開も急であるため、それら一つ一つを理解、あるいはイメージしながら読み進めようと思うとなかなか物語は進まないだろう。
それにしてもこの物語が1984年に出版されたとは思えないほど、サイバースペースというものを描いているのが興味深い。
自由自在にサイバースペースに出入りし、データを盗むというコンセプトを考えていることに先見の明を感じる。
今ならハッカーやVRという概念が広く通じるので内容も割と理解できるが、時代的にインターネットだってARPANETからの移行途中のはずで、多くの人がインターネットに触れられていないであろう1984年当時にこの物語を読んだ人たちは内容をイメージすることができたのだろうかと感じる。
物語としては、主人公であるケイスとヒロインであるモリイの関係性が好きだ。
ケイスにとってのリンダや、モリイにとってのジョニイのようなどこか現在にまで影を落とすようなものではない、人生のある一点で交差して強い輝きを発するものの、同じ線上にはいないというような関係性。
細かい点は飲み込んで読んだので、今度はよく噛みながら読むこととしたい。
ドラマの公開のほうが先になるかもしれないが。