NETFLIX版の『三体』が公開されたということで観ました!
小説も面白かったため、小説の中の世界がどのように描かれるのか楽しみにしていた。ネット上でも、NETFLIX版の『三体』についてこれは面白い、すごい、との感想が行きかっていたからだ。
しかし、実際に観終わると面白かったものの、思ったほどではなかったなというのが正直なところ。
現状のNETFLIX版『三体』は小説の『三体』(つまり一巻)から『三体 黒暗森林』の前半ぐらいまでを描いている。
小説版『三体』も全体からすると序章という扱いで盛り上がりにかける気がするため、映像化してもそのように感じたのは仕方がないと思う(その分次シリーズには期待している)。
ただ上記のほかにもNETFLIX版のここがなあという点がいくつかあったので挙げてみる。
ちょっとなあと思う点
葉文潔の人類に対する絶望が伝わらない
三体文明と地球文明の接触の始まり、すなわちこの物語のすべての始まりを引き起こした葉文潔。彼女は文化大革命で父を失い、母が父を糾弾し、自身は農村での過酷な労働、仲間と思っていた人間の裏切られる。そんな世界で生きてきてた。
そのため、三体文明と通信を行うことで位置情報を伝えると同時に地球侵略を手助けするというメッセージを送ることになる。
小説では、葉文潔のストーリーを丁寧に描いているので、これは三体文明にコンタクトしたくなる気持ちも分かるな、と納得できる。
しかしNETFLIX版では彼女のストーリーはそこまで丁寧に描かれないため、三体文明にコンタクトする動機が人類への絶望からくるものであるということが分かりにくい。
実際一緒に観ていた妻は、科学的好奇心で三体文明とコンタクトを取ったのだろうと考えている(それも間違いではないとは思う)。
葉文潔のストーリーは描きすぎると冗長になると思うが、もう少し動機を納得できるようなシーンを入れても良かったのではないかと思う。
肝心のシーンがいまいち盛り上がらない
小説では印象的な場面が映像でも描かれいていた。
例えば、宇宙の瞬き、人間コンピュータ、空に浮かぶ巨大な目だ。
小説内では細かく言葉を尽くして語られるため、印象的に感じたが映像では割とさらっと流せてしまって、いまいち気持ちが高まらなかった。
理由としては、それらが映像だけで魅せようとしているからではないかと考えている。
物語のコンテキストとして、それらの場面がいかに驚異的なことなのかが語られず映像で語ろうとしている。しかし、その肝心の映像は特に目新しいものではないため驚きはない。
例えば人間コンピュータのシーンで行っていることがどのぐらい驚異的なことなのかを理解するためにはコンピュータの仕組みについて知っている必要があり、またそれらを軍隊を使用して再現するというとてつもなさに思いを馳せないといけない。
それらの知識やコンテキストがあってこそ、人間コンピュータのシーンはカタルシスを得られるものになると思うのだ。
良かった点
悪いことばかり言ってしまったようにも思うので、ここは良かったという点もいくつか挙げてみる。
船の破壊の描き方
船が破壊されるシーンは、小説の描写通りだったように思う。
正直どうやって映像化するのだろうかと思っていたが、ここは「おお」と思わずなった。
ちょっとグロ要素強いなと思ったものの、製作陣がゲームオブスローンズのメンバーであればこれぐらいやるかというところ。
ゲーム中の三体人の蘇生描写
三体世界を体験するための仮想世界(ゲーム)中において三体人が干からびたり、干からびた状態から水に入れると戻る(乾燥ワカメみたいに)ような描写は、ここもうまく映像化したな思う。
三体人の異様さというのがうまく表現されているように思う。
テンポの良さ
先述の「葉文潔の人類に対する絶望が伝わらない」「肝心のシーンがいまいち盛り上がらない」で描写が足りないと書いたものの、そのおかげでテンポよく物語が展開していく。
そのおかげで「飽き」がくることがない。
人によっては小説の内容と全く同じだと飽きて途中離脱してしまうかもとも思うが、
それがない。
中国版のドラマ『三体』では原作をほぼ忠実に再現しているらしいので、そちらのほうもこんなにテンポよく進むのかどうかは気になるところ。
おわりに
色々書いてきたが、NETFLIX版『三体』面白かったし、次シーズンも期待している(むしろ次シーズンからが本番だと思っている)。
小説版をまだ読んでいない人は、文庫化もされはじめているので是非読んでみてほしい。